【2020年版】東大だけじゃない!大学系ベンチャーキャピタル(VC)一覧  

2020年5月東京大学のベンチャーキャピタル「東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大ICP)」が2つめのファンドを設立しました。国立大学を中心に日本の大学の基礎研究の力を競争力のある産業を創出する動きが続いています。

東京大学発のベンチャー企業が(良い面だけとは限りませんが)注目される機会が多いですが、大学発ベンチャー企業に出資するベンチャーキャピタル(ベンチャーファンド)も全国で設立されており、2020年は5月までに広島大学や徳島大学発でファンド設立の発表がされています。

 

今回は東京大学だけでなく全国の大学系ベンチャーキャピタル(ベンチャーファンド)について投資方針や実績などについて解説します!

目次
1.大学系ベンチャーキャピタルの設立経緯と種類
2.大学系4大ベンチャーキャピタル
3.大学研究機関シーズ投資民間ベンチャーキャピタル
4.私立大学系ベンチャーキャピタル
5.TLO地域連携活性化大学系ベンチャーキャピタル
6.まとめ

 

 

1.大学系ベンチャーキャピタル設立の経緯 ポイント!法制度改革と共に広がる大学系VCへの出資

 

「大学系ベンチャーキャピタル」と言うと、大学出資し設立したベンチャーキャピタル「東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大ICP)」が有名ですね。

 

今回は東大ICPのような直接大学が出資したベンチャーキャピタルだけでなく、広い意味で大学での基礎研究の成果やOBまで含めた人的資源を生かしたイノベーションや産業創出を目的とするベンチャーキャピタル(ベンチャーファンド)まで含めて「大学系ベンチャーキャピタル」として考え、設立された経緯、背景を見てみましょう

TLOによる産学連携

日本の大学は以前からの大学での研究成果を産業につなげる力が弱いと指摘され、また研究に関する知的財産等の権利保護、利用(特許取得やライセンス収入の管理)についても立ち遅れている状況でした。

 

1998年にTLO法(大学等技術移転促進法)という研究機関での研究成果を民間事業者に移転することにより産業の活発化や大学などの研究の発展を促すための法律が出来たことにより、大学独自だったり外部組織だったり広域連携型だったりの違いはあれど、全国の国公立大学、私立大学で大学の技術移転・産学連携組織が設立され取組が進められていました。

 

 

九州大学や愛媛大学ではTLOが地域金融機関などと共同でベンチャーファンドを設立し、大学発ベンチャー企業に投資しています

民間ベンチャーキャピタル設立

その後の2004年の国立大学法人化により国立大学も財政健全化や経営戦略の強化が求められるようになり、その戦略の1つとしてTLOや産学連携がさらに進められました。

 

この時期に東京大学のベンチャーキャピタル「株式会社東京大学エッジキャピタル(UTEC)」が設立されました。「東大ICP設」はまだ設立される前に民間のベンチャーキャピタルとして、東京と「技術移転関連事業者」として提携し東京大学の研究成果を基にしたベンチャー企業への投資、ハンズオン支援などを行っています。(現在は東京大学だけでなく他大学、他研究機関についても投資しています。)

 

 

その後、後述のように国立大学でベンチャーキャピタルが設立されるようになると同時に、他の民間ベンチャーキャピタルも設立の動きがみられるようになります。

国立大学が出資してベンチャーキャピタル設立

2014年に「産業競争力強化法」が施行され、産業競争力強化関連施策の推進として国立大学法人等
によるベンチャーキャピタル(VC)等への出資が定められました。

 

文部科学省の官民イノベーションプログラムにより東北大学に125億円、大阪大学に166億円、京都大学に292億円、東京大学に417億円が出資され、上記4大学にベンチャーキャピタルが設置されました。これらの資金力豊富な「認定ベンチャーキャピタル」から大学発ベンチャー企業に出資ができるようになり、投資数が増加しました。この頃私立大学や民間ベンチャーキャピタルでも、大学や研究機関発ベンチャー企業への投資を専門とベンチャーキャピタルやベンチャーファンドも設立されるようになりました。

国立大学、独立行政法人等の出資制度の広がり

その後大学発ベンチャー企業が設立される地域に偏りが出てきたこともあり、2018年には「改正産業競争力強化法」により、自大学に限らず他の大学や企業との連携等を通じて事業化を進める大学発ベンチャーも対象に追加されています。

 

京都大学イノベーションキャピタル株式会社は名古屋大学発ベンチャー企業への投資や、地域ベンチャーキャピタルの広島ベンチャーキャピタルとの提携により広島大学発ベンチャー企業への支援を発表しています。

 

 

今後さらなるイノベーションの創出と大学や独立行政法人の経営戦略の強化のための法改正が検討されています。

地域活性化のために大学発ベンチャー企業への投資

地域経済活性化支援機構(REVIC)も地域活性化事業として、地域金融機関と共同で大学発ベンチャー企業に投資するファンドを設立し地域の活性化を図る取り組みも行っています。すでに受付は終了していますが、島根大学やとっとり大学の産学連携事業ファンドがあります。

このようにさまざまな経緯で設立された大学系ベンチャーキャピタルがありますが、これらを

 

・「(官民イノベーションプログラムにより設立された)大学系4大ベンチャーキャピタル」
・「大学研究機関シーズ投資民間ベンチャーキャピタル」
・「私立大学系ベンチャーキャピタル」
・「TLO地域連携・活性化大学系ベンチャーキャピタル」

 

の4つに分類しそれぞれの特徴、投資方針、実績を見てみましょう!

2.大学系4大ベンチャーキャピタル

2014年の官民イノベーションプログラムにより設立された国立大学のベンチャーキャピタルは計1000億の政府出資を受けている官民ファンドの1つです。豊富な資金をもつこれらのベンチャーキャピタルの影響力は大きく、多くのベンチャー企業が誕生しています。

 

※投資先企業などの詳細情報はFundPress各ファンド情報へのリンクにてご確認いただけます。

「東北大学ベンチャーパートナーズ」

概要

材料や先端技術に関する研究が盛んな東北大学の研究成果をビジネスに育て新産業を創出することを目標としています。大学のベンチャーキャピタルがものづくり系スタートアップに投資することにより、民間企業の投資への呼び水効果ももたらします。

 

2020年9月には山形大と共同でファンドを設立する予定で、地域の新産業創出も目指します。

 

投資方針・実績

NASAのプログラムにも採択された宇宙開発企業「ispace」、津波の浸水や被害推定システム「RTi-cast」、超低損失軟磁性材料を開発している「東北マグネットインスティチュート」

「東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大ICP)」

概要

東大IPCは東京大学100%出資で設立された「投資事業会社」です。文部科学省の官民イノベーションプログラム(国立大学に対する出資事業)からスタートし、ファンドオブファンズや VC との 協調直接投資、ジョイントベンチャー、カーブアウトなどに取組み民間のベンチャー投資の活性化を目指しています。東京大学周辺のイノベーション・エコシステム拡大も担います

 

投資方針・実績

1号ファンド「協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合」2016年設立。民業への圧迫を避けるためファンドオブファンズとして投資、民間VCの投資を活発化を目標とします。

 

投資先はBeyondNextVentures、ファストトラックイニシアティブ、レミジェス・ベンチャーズ、グローバル・ブレイン、360ipジャパン(株)等。

 

 

2号ファンドは「オープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合 AOI(アオイ)1号」202年5月設立。カーブアウト、ジョイントベンチャー、プレシードベンチャー企業投資を目標とします。

 

武田薬品工業から2018年1月にカーブアウトした「ファイメクス」、ヘルスケア大手のユニ・チャームから2016年12月にカーブアウトした「Onedot」に投資しました。

「京都大学イノベーションキャピタル」

概要

世界トップレベルの研究機関である京都大学の研究成果を活用し、次世代を担う産業の創造に、投資活動を通じて貢献することを目的として、国立大学法人京都大学の100%出資子会社として設立されたベンチャーキャピタルです。

 

産業界とアカデミアの橋渡し役として、京都大学を始めとする国立大学の高度な研究成果・技術等を活用して次世代を担う新産業を創出します。

 

 

2020年5月には東京工業大学関連ベンチャーキャピタルの「みらい創造機構」や広島大学のベンチャー企業を支援する「広島VC」との提携も発表されています。

 

投資方針・実績

2016年1月に京都大学と民間企業からの出資を受け、同社を無限責任組合員とする160億円の「KYOTO-iCAP 1 号ファンド」を組成しました。ファンドの満期は最長 20 年間に設定し、基礎研究に強みを持つ京都大学の研究成果の実用化を長期にわたって支援することが可能です。

 

投資先は名古屋大発ベンチャー窒化アルミニウムウィスカーの高効率大量合成技術の「U-MAP」、iPS 細胞を活用して難病の新規治療技術の開発に「リジェネフロ」、タンパク質分解を作用機序とした新規医薬品の研究開発を進める創薬ベンチャー「ファイメクス株式会社」等。

「大阪大学ベンチャーキャピタル」

概要

大阪大学ベンチャーキャピタルは、大阪大学の有する世界屈指の研究成果をグローバルな視点で社会価値を創出する事をミッションとして2014年12月に設立されました。

 

投資を通じてイノベーションの牽引役である大学での研究成果の事業化及び事業支援を行い、「社会への還元」「世界に通用するスタートアップ」を実現します。

 

投資方針・実績

118億円の出資約束金額にて、OUVC1号投資事業有限責任組合を設立しました。大阪大学の研究成果を活用したスタートアップ・アーリーステージ案件を投資対象の中心に据えるとともに、大阪大学の特徴である共同研究講座・協働研究所等から生まれてくる、共同研究先企業とのジョイントベンチャーも重要な投資対象と位置付ける他、さらに地域活性化につながる中堅・中小案件にも投資しています。

 

投資先は大塚化学の糖鎖工学研究所からのカーブアウトにより設立され、大阪大学との共同研究で培った技術を基に、安価で高品質な糖鎖を医薬品業界へ提供する「株式会社糖鎖工学研究所」、大阪大学医学系研究科の研究成果である「肝細胞増殖因子(HGF)」を活用して、難治性神経疾患を対象とした治療薬の開発に取り組む阪大発ベンチャー企業「クリングルファーマ株式会社」等。

3.大学研究機関シーズ投資民間ベンチャーキャピタル

国立大学のベンチャーキャピタルが設立される前から民間ベンチャーキャピタルが日本の大学や研究機関の技術に注目し知財マネージメントや事業化に支援をし始めていました。

 

日本にとどまらない広範囲なネットワークやノウハウを生かし日本の研究機関の技術シーズに投資するベンチャーキャピタルについてご紹介します。

東京大学エッジキャピタル UTEC

概要

UTECは、東京大学が承認する「技術移転関連事業者」として、ベンチャー企業を通じた大学の「知」の社会還元に向けて、優れた知的財産・人材を活用するベンチャー企業に対して投資を行う民間のベンチャーキャピタルです。

 

東大ICPに先駆けて設立されており、設立の2004年から東大と協力してベンチャー支援を行ってきました。これまでに累積で約543億円となる4本のファンドを運営し100社以上に投資を行い、うち11社が株式上場、11社がM&A(合併・吸収)等でExitしています。

 

 

2016年に「東大ICP」も設立され協力して東大発ベンチャーの支援を行っていますが、UTECも近年は東大だけでなく他大学、他研究機関発のベンチャー企業への投資案件も多くなってきています。

 

投資方針・実績

革新的DNAシークエンサーの開発により、遺伝情報を活用した新産業を興していく「クオンタムバイオシステムズ株式会社」をはじめ、株式会社お金のデザイン、Nelumbo、すでにEXITした企業としてはペプチドリーム株式会社(東証1部)、ライフネット生命(東証マザーズ)、などに投資しています。

日本ベンチャーキャピタル

概要

1996年2月設立された日本でも最も古い独立系ベンチャーキャピタルの一つです。2003年大阪大学の「阪大イノベーション一号投資事業有限責任組合」を運営開始し、大学発ベンチャーのリード的役割を果たしてきました。2007年には京都大学の認定ベンチャーキャピタルとしてファンド運営を開始した他、同志社大学、名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャーファンド、など多くの大学関連ファンドの運営の実績があります。

 

投資方針・実績

主にスタートアップおよびアーリーステージの企業を中心に投資し、創業当初から上場まで一貫して支援しています。ハンズオン支援により積極的な経営支援を行うとともに、日本ベンチャーキャピタルの株主である多くの企業とのネットワークを活かし、幅広いアライアンスの可能性があります。これまでに150社のIPOの実績があります。近年の投資先企業は「カオナビ」、「株式会社名城ナノカーボン」、「株式会社ピースオブケイク」、「株式会社Phybbit」等。

 

みやこキャピタル

概要

2013 年 12 月に国立大学法人京都大学より「京大ベンチャーファンド 2 号」の運営民間事業者としての認定を受けた民間ベンチャーキャピタルです。京都、東京および米国シリコンバレーを拠点に、革新的な技術シーズやビジネスモデルに基づきグローバル展開を目指す将来性有望な国内外のベンチャー企業に対する投資を行っています。

 

京都大学内外の研究機関やTLO及び国内外の事業会社等とも連携して、技術シーズ発のみならずマーケットのニーズを積極的に取り入れた新しいスタイルの支援を行っています。

 

投資方針・実績

投資先企業としてはIPS細胞研究の「株式会社メガカリオン」、「株式会社お金のデザイン」、「株式会社ハルカス」等。

みらい創造機構

概要

2014年に設立したベンチャーキャピタルで、2016年5月に東工大と組織的連携協定を締結し、共同研究・学術指導の推進、人材教育支援、ベンチャー育成支援等を実施し、東工大の技術をコアにしたベンチャー、及び東工大生・卒業生が起業したベンチャーを創出・発展させています。また、九州大学系VCであるQBキャピタル合同会社や、京都大学子会社VCである京都イノベーションキャピタル株式会社と連携協定を結び大学関連ベンチャーをとりまくエコシステム形成を進めています

 

投資方針・実績

これまでに20社以上への投資を実行しています。2019年7月には投資先の株式会社ツクルバ (東工大発ベンチャー称号保有)が東証マザーズに新規上場しました。投資先企業は宇宙関連の「Synspective」、富士通研究所のスピンオフベンチャー「株式会社QDレーザ」、医療ソフトウェア開発、販売の「メドメイ株式会社」等。

Beyond Next Ventures

概要

2014年に設立されたベンチャーキャピタルで、主に医療・ヘルスケア分野を中心とした、技術系スタートアップへのインキュベーション投資を行っています。

 

起業家と共に技術シーズの段階から、大学、各省庁、協力者、専門家、投資家、事業会社との良質なネットワークを活かして、事業化を行っています。

 

 

JST:大学発新産業創出プログラム(START)における事業プロモーター、NEDO:研究開発型ベンチャー支援事業に関するベンチャーキャピタル、総務省ICTイノベーション創出チャレンジプログラム(I-Challenge!)に認定されています。事業化支援プログラム「BRAVE」、バイオインダストリーが集積するシェア型ウェットラボ、事業化を見据えた研究者とビジネスパーソンを繋ぐためのマッチングプラットフォームを運用しています。

 

投資方針・実績

exMedio、SUSMED、iCARE、CureAPP

ファストトラックイニシアティブ

概要

ライフサイエンスおよびヘルスケアに特化したファンド運営を行い、大学や研究機関、オープンイノベーションを推進する企業、官公庁や国の研究プロジェクト、そして各地域の健康・医療クラスターとも密接に連携し、国際的にも競争力の高い企業の育成に取り組んでいます。

 

投資方針・実績

株式会社カイオム・バイオサイエンス(2011年12月上場)、株式会社セルシード(2010年3月上場)、株式会社医療情報総合研究所、株式会社ProbeX、株式会社グリーンペプタイド、アキュルナ株式会社、メディフォン株式会社、モジュラス株式会社

レミジェス・ベンチャーズ

概要

製薬分野に特化した日米クロスボーダーベンチャーキャピタルです。フランス、イスラエル、ドイツ、米国、日本の企業に投資しており、拠点は東京および米国マサチューセッツです。

 

将来有望な新薬候補化合物や最先端技術を有するベンチャー企業や各疾病領域におけるキーオピニオンリーダーなど広範なネットワークがを有しています。

 

投資方針・実績

日本の大学等研究機関が発見し、創製した技術に基づいて新会社設立を行います。会社の設立段階から、再現性確認、候補物質の最適化、開発戦略の策定を経て、機関投資家がシンジケーションを形成するシリーズAラウンンドファインナンス段階まで、レミジェスベンチャーズのチームが自力で進め、その後経営チーム組成を行います。投資先企業はカナダのKisoJi Biotechnology社、Luca Science、Imel BioTherapeutics等。

360ipジャパン

概要

360ipジャパンは2012年に世界最大の独立系非営利の研究開発・技術商業化科機関である米国バテル記念研究所経営陣等により設立されました。

 

日本における先端技術の商業化・投資および商業化ノウハウの地域移転を目的に、企業や大学等研究機関の技術・知財の商業化や新規事業開発を手掛けています。

 

 

JST大学発新産業創出プログラム(START)、総務省ICTイノベーション創出チャレンジプログラム(I-Challenge)、NEDO研究開発型ベンチャー支援事業に認定されています。

 

投資方針・実績

日本の先端技術の商業化を目的に平成29年8月に「360ipジャパンファンド1号投資事業有限責任組合」を設立しました。幅広い技術分野を対象に、日本の大学発ベンチャー等、主にシードからアーリーステージのベンチャー企業に対し投資を行います。

4.私立大学系ベンチャーキャピタル

私立大学は国立大学法人とは異なり、独自にベンチャーキャピタルなどへの出資が可能なため古くからの実績をもつベンチャーキャピタルもあります。それぞれ独自の方針で投資を行っています。

株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ

概要

慶應イノベーション・イニシアティブは慶應義塾大学のの成果を活用して革新的な新事業を創造するスタートアップに投資を行い、新産業を創出し、社会の発展に貢献することをミッションとしています。

 

慶應義塾の関連会社である慶應学術事業会と野村ホールディングスが共同で設立しました。

 

投資方針・実績

IT融合領域、デジタルヘルス、バイオインフォマティクス、再生医療の4分野を中心に、慶應義塾大学の研究成果を活用し、社会的に大きなインパクトを生み出すベンチャー企業にシード、アーリー中心に、レーターフェーズまで投資を行っています。

 

2020年5月に設立した2号ファンドでは、慶應大学に限らず日本の大学や研究機関の研究結果を活用するベンチャー企業に広く投資する予定です。投資先企業は治療用アプリの「CureApp」、次世代リチウムイオン電池の「APB」、レーダー衛星の「Synspective」、希少疾患治療薬の「クリングルファーマ」計算科学を駆使して創薬を行う「モジュラス」等。

ウエルインベストメント

概要

ウエルは、1998年に早稲田大学アントレプレヌール研究会を母体として設立された、大学系としては我が国で最も業歴の長いベンチャーキャピタルです。

 

早大から2割程の出資を受けるていますが、これまで早大と関係ない企業にも出資してきました。専用社内で独自のリサーチ部門を擁し、東京大学、京都大学、スタンフォード大学などの有望な企業にも数多くの投資育成実績を有しています。

 

 

2018年には正式に早大と提携し早稲田大学アジア太平洋研究センター、早稲田大学ビジネススクール、早稲田大学知的生産本部、理工学総合研究センター等と連携しながら事業を進めています

 

投資方針・実績

1999年6月からWIC1号~4号ファンド、ウエル技術ベンチャーファンド、早稲田1号ファンド(20億円)が設立されています。VALUENEX株式など20社以上が株式公開しています。早稲田2号ファンドからはCoreTissue BioEngineering株式会社、Zuva株式会社に投資を行っています。

東京理科大学イノベーション・キャピタル

概要

018年11月に設立されたベンチャーキャピタルで、社会の健全な発展に寄与し得る企業への投資・支援を行い、社会イノベーションの実現に貢献し、東京理科大学初のベンチャー企業に限らず、日本及び世界の調和的かつ永続的な繁栄へ貢献することを目的としています。

 

投資方針・実績

映像解析AIプラットフォーム「SCORER(スコアラー)」を運営する「フューチャースタンダード」、「ウィズダムアカデミー」、民間版世界銀行を目指す「五常・アンド・カンパニー」、業界初となるプロフィットシェア型のビジネスモデルを実装した上で、品質の高い分散を可能にする新しい個人向け資産運用サービスを2020年に開始予定の「株式会社sustenキャピタル・マネジメント」等に投資しています。

5.TLO地域連携・活性化大学系ベンチャーキャピタル

TLO組織が地域の金融機関や企業などと共同で設立するベンチャーキャピタル(またはベンチャーファンド)や、地域経済活性化支援機構(REVIC)が地域活性化事業として大学発ベンチャー企業に投資するファンドは、どちらも地域の活性化を目標として日本全国の国立大学を中心全国に設立されています。

 

それらの一部をご紹介します。

QBキャピタル

概要

九州大学が出資し承認TLOである産学連携機構九州が西日本シティ銀行と共同で設立したベンチャーキャピタルです。

 

新産業の創出による九州経済の活性化を目的としたファンドの設立し、九州大学を中心とする九州地方の大学が有する研究成果等の知的財産と、地域の事業会社様、弊社が有する様々なノウハウを融合させ、大学の技術シーズを創業前から成長段階まで一気通貫で支援しています。

 

 

NEDO研究開発型ベンチャー支援事業に関するベンチャーキャピタル等の認定、総務省ICTイノベーション創出プログラム(I-Challenge!)、JST大学発新産業創出プログラム(START)の認定を受けています。

 

投資方針・実績

九州大学発医療ベンチャーで「創薬事業」を主軸とする「株式会社先端医療開発」、風力発電機のための後付け二重プロペラ化アタッチメントの開発の「株式会社 日本風洞製作所」、高糖度トマトの周年栽培を実現する「農業生産法人株式会社リコペル」、スポーツ分野およびリハビリテーション分野中心に製品の開発から販売、スポーツテック/IoTに関するシステム構築の「株式会社スポーツセンシング」等に投資しています。

いよぎん愛媛大学発ベンチャー応援ファンド

概要

伊予銀行、愛媛大学、テクノネットワーク四国(四国TLO)が共同で設立したベンチャーファンドです。アーリーステージの愛媛大学発ベンチャーを地域金融機関、TLO機関、大学の3者がそれぞれのフェーズで支援し、地方創生に貢献します。

 

投資方針・実績

愛媛大学が開発した液中プラズマに関する特許を活用し、主に中国における環境汚染浄化に向けた取り組みを行う「株式会社環境・エネルギー技術研究所」に投資しています。

産学連携キャピタル

概要

2020年5月阿波銀行および「大学支援機構」の出資により設立されたベンチャーキャピタル。

 

「大学支援機構」は元は徳島大がインターネット上で資金を募るクラウドファンディングのサービスなどを学内外に提供する設立した一般社団法人です。

 

徳島大学発ベンチャーや大学が保有する人的資源研究シーズを発掘し投資と事業化へ向けたハンズオン支援を行うことで、徳島から新産業創出の実現を目指しています。

 

 

1号ファンドである「産学連携1号投資事業有限責任組合」は、徳島大学、阿波銀行、地域経済活性化支援機構(REVIC)および大学支援機構の協力により設立されたファンドで、REVICの地域金融機関への特定専門家派遣事業から産学連携ファンド組成に結び付いた初の事例となっています。

 

投資方針・実績

ゲノム編集受託サービスを提供する「セツロテック」への投資が2020年7月1日に発表されました。

広島大学・広島県内大学発ベンチャー支援投資事業有限責任組合

概要

広島大学をはじめとして広島県内の大学、研究機関が有する研究シーズや、研究者・学生等の関係者を起点とするベンチャー企業に対し投資を行ない、地域経済の持続的な発展と雇用創出による「地方創生」に貢献するファンドとして2020年設立しました。

 

京都大学イノベーションキャピタル株式会社とも提携しています。ファンドによる運用収益の一部は広島大学に寄付し、次世代の研究シーズ創出に繋げます。

 

投資方針・実績

広島県内大学等が有する事業シーズに基づき設立された企業、及び関連する技術を基盤とする企業、広島県内大学等の研究者、学生等により設立された企業、及び卒業生が事業運営上のキーマンを務める企業に投資します。

静大ファンド

概要

浜松いわた信用金庫、はましんリース(株)、信金キャピタル(株)等が運営する新産業の創出・育成を目的とした中小・ベンチャー企業向けのファンドです。

 

静岡大学の大学発ベンチャーを取り巻く環境は、工学部と情報学部が集まる浜松市中区の静岡大学浜松キャンパスに集まっており、静岡大学の共同研究は、2004 年の法人化の前年頃から伸び、県内企業が多くの割合を占め地域への貢献度が高くなっています。

 

投資方針・実績

静大1号ファンドは、2003 年 12 月に組成、規模は 3 億円で、投資対象は、光、無線、センサー、IT、アグリビジネス(環境)分野を対象に 6 件について行いました。

 

2007 年には、「はましん地域育成ファンド」の総額 5 億円のうち、2 億円を「静大 2 号ファンド」とし、静大発ベンチャー向けの基金として設置しました。

 

3号ファンドは、「はましん地域育成第二号・静大ベンチャーパートナーズ第三号投資事業有限責任組合」として組成され、X線の最小単位であるフォトン(光子)1つを捉える究極のイメージングを可能とする、大画面X線検出器の量産化を目指す「ANSeeN」へ投資を行っています。

とっとり大学発・産学連携投資事業有限責任組合

概要

株式会社山陰合同銀行、ごうぎんキャピタル株式会社、REVICキャピタル株式会社が地域活性化事業として設立したファンドです。

 

鳥取大学の研究シーズに着目し、医学系、工学・農学系を中心とした大学技術にビジネス上の工夫を組み合わせることで、従来の大学発ベンチャーで問題であった事業化する上での人的経営支援にアーリーステージからハンズオンで関与し事業の組立てを大学の先生等と一体となって進めることで、大学技術とビジネスノウハウを組み合わせた、新たな「地方大学型のベンチャービジネス」を開発することに挑戦し、成功事例を創ることを目指しています。

 

投資方針・実績

鳥取大学医学部附属病院と医工連携に取り組んでいるロボットベンチャー「株式会社テムザック技術研究所」、キチンナノファイバー(カニ、エビなどの甲殻類の外皮を構成する主成分のキチンを繊維の状態で取り出したもの)の製造から販売を行う「株式会社マリンナノファイバー」、医療機関や介護・福祉施設等の医療系の新製品の開発、事業化を行う「株式会社メディビート」に対する投資を行っています。

しまね大学発・産学連携投資事業有限責任組合

概要

鳥取と同じく株式会社山陰合同銀行、ごうぎんキャピタル株式会社、REVIC キャピタル株式会社により設立されたファンドです。

 

投資方針・実績

島根大学のナノテクプロジェクトセンターの研究成果をもとにした製品の開発・製造・販売を目
的とした「株式会社S-Nanotech Co-Creation」、中海(なかうみ)に大量に発生する海藻(オゴノリ等)を使用した肥料を製造・販売する「株式会社なかうみ海藻のめぐみ」等に投資を行っています。

6.まとめ

今回は「大学系ベンチャーキャピタル」として、官民ファンドや民間ファンド、また地方金融機関が設立したものも含めてご紹介しました。

 

大学系ベンチャー企業に対しての期待値の高まりとともに、多方面からのベンチャーキャピタルの参入が続いていることがわかります。ただ、研究シードの段階から資金の回収までの期間の長さや、事業化までの技術的経営的困難の多さなどから、民間だけでは投資できない案件も多く官民ファンドが活用されています。

 

 

日本の人口構造の変化だけでなく、新型コロナウイルスの世界的流行によりヘルスケア製薬分野への需要がさらに高まる中、今後の法改正による出資基準が変更など大学系ベンチャーキャピタルに関わる動きを注視していくことが大切となりそうです。

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